東京高等裁判所 昭和28年(う)3038号 判決
被告人 柴野直夫
〔抄 録〕
次に、控訴趣意各論第一(二)(7)および(三)の点(原判示第七の公文書の変造なりとの主張点)については、原判示第七につき原判決引用の証拠を綜合するに、前記原判示第五の場合と同様に被告人と共謀による資材騙取を企図していた柴野二郎が昭和二五年一月二三日頃信越電気通信資材部(長野市所在)の係員に対し原判示第四のときにおける不要電線類譲渡申入れをなす如く装つて欺罔し、これにより同年二月九日頃および同月中旬頃の二回に原判示第七(一)(二)所載の電線類を騙取したので、その犯跡を隠蔽するため、行使の目的で、当時被告人を介して前記通商産業技官広沢経夫から交付を受けた同判示「資材譲渡申請書に関する件」と題する同年二月一日附工業技術庁地質調査所長の記名押印ある信越電気通信資材部長宛公文書中譲渡申込の品目数量として「二ケ撚ゴム線二千三百米」と記載ある部分を擅に切り取り、新にその品目数量等として、一三対架空鉛被、ケーブル六一、七米外七八点の品目数量を逐一記載した別紙を添附したことが認められる。
而して、右原判示第五および第七の各資材譲渡申請の公文書としては、その品目数量は記載内容中最も重要にして中心的な部分であるから、初め広沢事務官から交付を受けた各申請書につき、その品目数量の記載部分を擅に切り取つて之とは全く異る品目数量を記載した文書を新たに添附し以て元来真正に成立した公文書とは、その外形および記載内容共に総て別個のものとなる程度まで変革を加えた以上これらは単なる変造の域を超えて全然独立な公文書を僞造したものと解するを相当とする。のみならず、たとい之を以て変造の程度に止まるものなりとするも、之に対する適用法条は結局同一に帰するため以て判決に影響を来すべき事柄ではない。故に控訴趣意各論第一(二)(5)(7)および(三)所論の点については、右いずれの点から観るも各所論のような事実誤認または法令適用上の誤りはない。